愛知県常滑市 大谷地区祭礼
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3月27日(土),28日(日)常滑市大谷地区の祭礼がありました.2日間の祭礼のうち27日(土)のみ見物に出かけました.この祭礼は常滑市大谷にある八幡社の祭礼です.この神社は名鉄常滑線「常滑」駅下車.知多バス『上野間』行きで約15分.名鉄知多新線「上野間」駅下車.知多バス常滑方面『病院口』行きで約10分.いずれも「大谷」で下車します.

大谷地区の祭礼は以前は亀崎の潮干まつりのように山車を海岸に曳き下ろして三番叟を奉納したそうですが,伊勢湾台風以後防潮堤が築かれたため今は海岸近くの公園に曳かれ,それまでと同じように海に向かって三番叟が奉納されます.
また,「尾陽村々祭礼集」に宝暦5年(1755)の大谷村の祭礼の様子が次のように記されています.『一.八幡大王神明祭礼、山車二輛、人形橋弁慶牛若猩々唐子二人、木綿幟七本神前より町中引渡、祭日六月十五日、右社同村禅宗曹原寺扣』
このことから,当時の山車には橋弁慶,牛若,猩々,唐子等のからくり人形があったと思われますが,現在は蓬莱車には翁,東桜車には媼の三番叟人形が残されています.
大谷地区の山車は「知多型」の山車で原型は宝暦年間(1751〜1763)以前のものといわれています.2輛とも平台輪の端が渦の模様をあしらった木鼻状になっています.また,堂山の幅に対する上山・前壇の幅の比が他の山車に比べて格段に大きく近世中期の古い形態を伝えるものです.

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No01:左が東桜車,右が蓬莱車.当日は試楽のためか追い幕と吹き流しは付けられてはいませんでした
No02:両車の前山
No03:両車の上山高欄と水引き幕の間の飾り.東桜車のものは極彩色.蓬莱車のものは白木彫りが主体になっています
No04〜05:町内を曳き回される山車
No06:海岸近くに作られた公園に揃えられます
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浜条組 蓬莱車
天保11年(1840)『御車山目録』にいると,旧山車と思われる「御古山」を大足村(現武豊町)に売却し天保13年(1842)6月に立川善兵衛によって「新御車山」を建造したという記録が残っているそうです.彫刻は立川常蔵昌敬の銘があり天保13年の作といわれています.
【主な彫刻】壇箱−唐子と犬(立川常蔵昌敬,天保13年)
        蹴込−龍(立川常蔵昌敬,天保13年)
        持ち送−波(立川常蔵昌敬,天保13年)
        脇障子−関羽と張飛(立川常蔵昌敬,天保13年)
【幕】大幕−緋羅紗に銀糸で波.金糸で海老の刺繍   水引幕−白地に波と雀
【からくり】−前山三番叟(翁)
No07:前楫には引きやすいようにと横楫がついていています
No09:神社に曳き込まれた山車.清めの塩が大量にまかれます
No10:前山の唐破風.懸魚,虹梁,蟇股,木鼻など豪華な彫刻で飾られています
No11:立川常蔵昌敬作の龍の彫刻が施されている蹴込
No12:これも立川常蔵昌敬作で唐子と犬が彫刻されている壇箱
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No13:前山唐破風下の彫刻
No14:立川常蔵昌敬作の脇障子(左側)
No17:木鼻状の平台輪
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浜条組 蓬莱車
旧車を明治初期に布土村(美浜町)に売却して大正7年(1918)阿久比横松の江原新助の手で新造されたといわれています.素木の彫刻も見られるが堂山の斗形などは金塗りや極彩色に塗られている.
【主な彫刻】壇箱−力神と唐子と鶏(彫常)
        蹴込−竹に虎(彫常)
        脇障子−左は鬼退治 右は須佐之男(彫常)
【幕】大幕−緋羅紗の無地   水引幕−紫の地に金の鶴
【からくり】−前山三番叟(媼)
No19:八幡社に引き入れられた東桜車.上山には松と桜の木が飾られています
No20:水引き幕と堂山斗形.極彩色に塗られています
No21:彫常作の竹に虎の彫刻が施されている蹴込
No22〜24:彫常作の力神と唐子と鶏が彫刻されている壇箱(No22は右端の力神.No24は左端の力神)
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No25:前山の唐破風.懸魚,虹梁,蟇股,木鼻など豪華な彫刻で飾られています.左の蓬莱車に比べて金塗りが多い
No26:堂山の斗形.
No27:上山唐破風
No28:八幡社から曳き出される東桜車.塩が大量にまかれます
No30:蓬莱車と同じように前楫には横楫が付けられています
No25 (208kb) No26 (193kb) No27 (198kb) No28 (145kb) No29 (162kb) No30 (139kb)
参考文献: 「立川流の山車と彫刻」
「知多の山車祭り」
「常滑市誌(文化財編)」
「からくり人形の宝庫」