「西浦の田楽」次第
演目名は「西浦の田楽 鑑賞の手引き」ー水窪町教育委員会に拠りました.
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地 能
庭ならし 楽堂の前に能衆全員が集まり,詞章を唱えます.途中から太鼓が入り,中屋敷地が箱に入った稗団子をとり皆にまわします.
次に,タヨガミ少年二人が,太鼓と笛に合わせて扇を開いて五方にタイハイの舞いを舞います.タヨガミ少年2人は,烏帽子を花笠に変えて,タイの横に立ちます.
御子舞 腰に刀を差し,鈴と扇を持って最初に池島庄屋地が舞います.次に別当地,所能庄屋地が順に舞います.
一つの舞の形を〈手>といいますが,最初は七の手,次は五の手,三の手と行われます.
三人の舞が終わると,タヨガミ少年がタイハイの所作をします.
神子舞は一時間近も行われます.
地がため 紅白のひもを撚った襷をかけ,白黒に塗られた長さ三間位の長い槍を担いで登場し,舞庭を大きく回ります.次に,槍を地面に突き立て,足を左右に動かし地面を踏みしめるような所作をします.次に,槍を両手で高く掲げ,同じように地面を踏みしめるような所作をします.
この舞は,地面の中の悪霊を追い払い舞庭を清めるためのものです.
もどき 「もどき」とは,直前に行われた演技を真似ることによって,その意味をより強調するためのものです.ただ,もどきの演技は微妙に前の演技とは異なり,時には滑稽なしぐさをすることがあります.
ここでは,注連縄を襷にして,地固めより短い槍を持って早いテンポで舞います.
つるぎ 紅白のひもを撚った襷をかけ,左肩に剣をかつぎ,右手に扇を持って登場し,前に一歩飛び三歩足踏みをして,舞庭を回ります.
次に,鞘をはらって舞庭を回り,最後にタイの左右を三回,中央を三回合わせて九回切って退場します.
この舞は空中の悪霊を追い払うための舞です.
もどき 注連縄を襷にして,木刀を右肩に,扇を左手に持って剣の舞と同じように舞います.
高足 高足(玩具の「ホッピング」のような木製の道具)を左肩に担ぎ,右手に扇を持ち,花笠をかぶって登場します.舞庭を三周して中央に出て,数回高足をついて横木の上に飛び乗ってピョンピョンと飛びます.
もどき 注連縄を襷にして,高足と同じように演技をしますが,アドリブで掛け合いをしたり,高足で飛ぶ回数を競い合ったり面白おかしく,見物人の笑いを誘います.
今までの舞と同じように,悪霊を祓う舞です.
猿舞 雄と雌の猿面をつけて二人で舞います.まず,鋸と斧を腰に差した雄猿が登場し,今年切る木を見定めるように舞庭を回ります.途中で斧をとり,研いだり木を切るまねをします.雄猿が舞っている間に赤い布で頬被りをし,女陰をかたどった木を腰にぶら下げ,花の木を持った雌猿が登場し見物人の間を回ります.楽が止むと,「やーやばあさん飯もってきたか」と二人の狂言風の掛け合いになります.再び楽が始まると,雌猿が退場しますが,雄猿はしばらく舞い続けます.
ほだ引き 南タイから火のついた焚き木(ほだ)を取り出し,舞庭に置きます.能頭が唱えごとをすると,ほだの両端にツルを付け,二人で引き合い,ほだを持ち上げます.
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御船渡し 能衆全員が観音堂に入ります.観音堂の灯明から移した火を御船に取り付けます.綱をゆっくり引くと御船は北タイに向かって進んでいきます.御船がタイに着くと,消防団員が登り火を点火します.御船は綱を渡って,行きと同じように帰ります.
(長野県阿南町新野の「雪祭り」も同じように立てた松明に船を渡して点火します)
つるの舞 右手に鈴,左手に扇を持ち,刀を腰にして舞います.別当,本堂別当,所能能頭が順に舞います.
出体童子 上着を付けた四人の能衆が,花笠と扇を持って登場します.舞庭を列を作って回ったり,逆に回ったりします.次に,花笠を付け,右手に鈴,左手に扇を持って,四人が四角になって跳ぶように舞います.二人で,鈴を持つ手を組んだり,扇の手を組んだり,背中合わせになったりして回り,最後に一列になって退場します.
麥つき 舞庭に筵が敷かれ,太鼓が縦に据えられます.太鼓の周りに能衆が集まり,まず梅平地が詞章を唱えたあと,太鼓の周りのものが,くわがらで太鼓をたたきます.
. 田うち 麦つきに引き続き行われます.麦つきと同じ所作です.
水な口 前の演目で使用された太鼓に,桂山表地が烏帽子をかぶり,上着を引っかけ,竹の皮に半紙をはさんだゴザオリを担ぎ,太鼓に腰掛けています.その後に散米盗人といわれる梅平地が控えています.梅平地は,ゆっくりとした太鼓の音に合わせて,表地に近寄り背に触れると小走りに退きます.この所作を12回繰り返しますが,その間に上着を取って返す.烏帽子を取って返す.最後に御幣を取ってしまいます.梅平地は返るとき,散米を撒き散らします.
種まき 別当が一人で布袋を持って登場します.詞章を唱え袋の中の種を五方にまきます.
よなぞう 牛買いである「よなぞう」は梅平地が,親方である「ててつこ」は大栗平能頭,牛役の上鶯喜平地が演じます.ててつこが楽頭の前で唱えごとをしています.そこへよなぞうが登場し掛け合いを始めます.掛け合いが終わると,よなぞうが,舞庭を暴れ回っている牛を引いてきます.芝刈りに連れて行ったり,籾種を買いに行かせたりします.牛を洗うと暴れて幕屋に引っ込みます.
鳥追 両手にささらを持って四人で舞います.
農作物を荒らす鳥や獣を追い払う舞です.
殿舞 能衆八人がそれぞれ扇,小刀,長刀,弓ぼこ,槍,台笠,弓矢,弓を手にして登場します.舞庭を廻ると,それぞれの持ち物をトガメが受け取り「……之はなんだ」と問うと,別当がひとつひとつ「之は殿の御扇」といい,全部が披露されると,梅平地が持っている弓を天に向かって射て幕屋に戻ります.
惣とめ 最初は,「花ザサラ」といって中屋敷地,別当がスリザサラを持って,飛び跳ねるように舞います.次に,「はんこいつき」といってスリザサラの二人が舞っていると,「のたさま」の面をつけた幕屋別当が,羽子板を持って舞います.
山家惣とめ 背中に「ねんねんぼうし」という赤子の人形を背負い,萱の箒を持った子守役の池島能頭が飛び出し,見物人の頭を箒で叩き廻ります.赤ん坊の親役の別当と重箱を持った喜平地の前に子守役が現れます.母親が子をおろし小便をさせます.子守役はこの間に飯を食べます.食べ終わった後,母親が子を背負わせようとすると,子守役はいやがります.やっと子守役をなだめて子を背負わせます.すると,子守役は箒で頭を叩いて見物人の間を暴れ廻って,幕屋に退場します.
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. くら入れ 能衆一同別当家に帰り,休憩を取ります.
種おり 別当と榊の枝(花ノ木といいます)を担いだ表地が並んで,五方に向かってたねおりの唱え事をします.
桑とり 別当一人が花ノ木と扇を持って,五方に向かって唱え事をします.花の木の葉をちぎって散らします.
糸引き 舞庭の中央で,ござを縦に巻いた中に平地が入り,中屋敷地があおぐ扇に合わせて,くわがらに付けた繭を上下させます.繭から糸をとる仕草です.
餅つき 舞庭に太鼓を縦に置きます.太鼓を臼に見立て,まるめた上布を餅に見立て杵でつきます.数回搗くと,「アァねばった ねばった」といい,これを三回繰り返します.
君の舞 舞庭には細長い腰掛けが置かれます.上着を付け,花笠をかぶった「君の舞の子」といわれる別当と桃田地が扇をもち背中合わせに座ります.スリササラを肩にした囃子二人が両側に立ちます.さらに,頭から上着をかぶった「君の舞の親」といわれる別当が,「シッテリ」といわれる鼓のような物を持って登場します.太鼓に合わせて,座っている二人は場所を変え,立っている三人は持ち物を取り替えて舞います.最後は,別当が一人残って「しん舞」を舞います.
田楽舞 最初に大栗平ワゼ地が長い槍を持って登場し,地面を2回突き,すぐ退場します.今度はシッテリを持って登場し,地面を踏みつける反閇を行います.次に「チリ舞い」といって,ビンザサラを持ち,花笠をかぶった能衆四人が登場し,輪になってササラをすります.最後に,能衆全員が登場し,大きな輪を作って舞います.
佛の舞 六観音(千手,勢至,聖,子安,せんじ,馬頭)の行道です.それぞれの観音には松明を持った介添え役がつき,先頭と最後の観音は竹に花ノ木と布をさげた御旗を持ちます.舞はなく,舞庭を廻るだけであるが,非常に神秘的で前半のクライマックスです.
(四天王寺の舞楽にも同じような「菩薩」があります.菩薩面をつけ介添え役に腕を引かれて舞台を廻るだけのものです)
治部の手 大栗平能頭が,右手に鈴左手に扇を持ち,治部の面をつけ太刀を腰に着けて登場します.君の舞の親のような舞を五方に舞います.
のたさま 本堂別当役がのたさまの面をつけて登場します.舞は治部の手と同じです.
大栗平能頭が翁の面をつけ登場します.舞は治部の手と同じです.
三番叟 三番叟の面をつけ,烏帽子をかぶって登場します.舞は治部の手と同じです.
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は ね 能
高砂 高砂の面をつけ,「ぶち」とよばれるほだで作った祭具を持ち,扇を持って登場します.
しんたい しんたい面をつけ,右手に扇,左手にぶちを持って登場します.両手を大きくあげてひらひらと飛び上がるように軽快に舞います.
梅花 赤鬼面をつけ右手に扇左手にぶちを持って舞います.片足を跳ね上げるようにし,扇を持った手を大きく上げます.しんたいの舞いに比べて男性的な舞です.
山姥 赤鬼と白鬼が扇とぶちを持って登場します.舞庭を謡いに合わせて,ゆっくり飛び跳ねながら廻ります.
観音の五法楽 小さな弓矢を持ったしんたい面が登場します.赤鬼と白鬼が舞いに加わると,謡になります.一歩跳んで二歩ゆっくり戻る二つ返しの振りを双方が繰り返します.謡の最後でしんたい面が矢を射ると,赤鬼と白鬼はしんたい面を残して退場します.
しょうじょう しんたい面をつけ扇とぶちを持ち登場します.大きく両手を上げ飛び跳ねる二つ返しの舞を五方に舞います.謡の終わりには横になって寝たふりをします.
くらま しんたい面をつけ,長刀を持った牛若が登場し一人で五方に舞います.謡にはいると赤鬼面をつけ,右手に扇左手にぶちを持った天狗が現れます.牛若と天狗の争いになります.謡の途中で太鼓が舞庭に降ろされ天狗はそれに腰掛けます.牛若は天狗の前で舞を続けます.天狗が腰を上げると手にした扇とぶちで長刀を受け,二人で肩を組むようにして舞います.天狗が退場した後も牛若は暫く舞い続けます.
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さおひめ しんたい面と髪の毛を後に垂らしてた女面(さお姫の女)と男面(さお山の男)をつけた三人が両手に花の木を持って,ゆっくり跳ねながら登場します.謡の間もゆっくり跳ぶように舞います.
やしま 赤鬼と白鬼が木刀を腰にさして登場します.楽堂の前で木刀を抜いて向かい合います.謡になると,刀を振り上げ立ち会いになります.刀を合わせるとすぐ引き,また踏み込むという所作を繰り返します.
野々宮 ののみやの面に女物の布をかぶり,前掛けをし両手に花の木を持って,余り動き回らないで舞います.
べんけい
(橋弁慶)
赤鬼の面をつけ木の長刀を持った弁慶が登場します.しばらく弁慶が舞っていると,しんたい面をつけ木刀を腰にさし薄い布をかぶった牛若が登場します.謡いに合わせて立ち会いをする間に,弁慶が太刀を落として決着が付きます.牛若が退場した後も,弁慶はしばらく舞い続けます.
. うる舞 閏年のみ行われる舞です.舞は特に決まりはないようですが,「さおひめ」と同じものを使っています.ただ,幕屋から出るとき,別当が御幣を持って先頭に立って舞います.謡は閏年の歌詞になります.
番 外
獅子舞 火の王の面をつけ,扇と花の木を持った池島能頭に導かれて,二人立ちの獅子が幕屋から登場します.獅子の前は別当,後は右手に鈴,左手に花の木を持った中屋敷地が務めます.また,先導役を薬師といいます.獅子と薬師にはそれぞれ一名の介添え役がつきます.獅子は,楽堂前に敷かれた茣蓙の上で,楽堂に向かって頭を下げますが,後役の中屋敷地は立ったまま鈴を鳴らし続けます.終わると,薬師に導かれて退場します.
しずめ 田楽祭りにお迎えした神々を,お送りする神事です.しずめの面を持った別当が楽堂の前に敷かれた茣蓙に坐ります.面をつけ,印を結びます.すると,楽堂から池田屋地のトガメ役が「びしゃもんのいでさせたもうところになんじは来いまいものだ.なにしにきた…」という問いに対してしずめは上を向いて苦しそうなうなり声を上げます.「しずめ」と「とがめ」の問答が終わると,しずめは両手を後に回して,印を結んだまま後ろ向きに別当家の者に導かれて幕屋に戻ります.
は ら い
火のう 別当が,ひのう面と短い矛を持って楽堂前の筵に坐ります.面を左手に持ち,右手に持った矛を地面に突いて祓います.
水のう 別当が,みずのう面と扇を持って楽堂前の筵に坐ります.面を左手に持ち,扇を面にかざして祓います.
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