次第解説(本田安次著 「日本の傳統藝能 ~樂W」 を参考にしました)
楽器調べ 太鼓(締太鼓)2、銅拍子(鋼鉄製)、篠笛を奏します。
修祓式
神楽長は、机の上の笏を2つとって、カチカチカチ…と7つ打って拝し、次に同じように5つ打って拝し、次に3つ打って拝します(これを「七五三に打つ」といい、各曲の始めに打ちます。後には五三に省略します)。
神降祝詞 七五三に笏を打った後、通常の再拝二拍子一拝します。次に、再び七五三に笏を打ち、楽が始まると、楽人の一人が中央に立ち、「かけまくも畏き、いざなぎ、いざなみの大神…」を唱えます。
次に、七五三に笏を打ち、招神祝詞「今日のみ祭仕えまつるによりて、天かけり国かけり…」を唱えます。
天津祝詞 七五三の笏の後、天津祝詞を唱えます。
大麻行事 楽人が祓いの麻をとり神前、釜、楽人、参拝人を祓います
塩湯行事 楽人が、禊の具をとり、緒方を祓います。
送神祝詞 楽人が、送神の祝詞「今日の祓いわざ終えぬれば、もとつ御座に帰り鎮まりませとかしこみかしこみ申す」を唱えます。
花入ノ式 米(花入米)一升をを盛り、その上に団子を乗せ、御神酒を入れた杯を置いた膳十二膳が、楽人・神子に出されます。参拝人にも団子と御神酒がふるまわれます。
打鳴らし 七五三の笏があり、楽にあわせて神歌「打鳴らす、ひょうとつつみの初音をば…」を歌います。
次に、神子舞の歌をいくつか歌います。
大祓 一同で大祓の文を奏します。
けんざん湯清浄 楽人が、釜の塩と散米を取って釜に振りかけ、、幣束で釜を祓います。
太鼓を中央に出し、神楽長が幣束で釜を祓い、楽の音に合わせて「インヨー、そうれ東西南北を拝し奉るに、…」と湯清浄の歌を歌います。
五調子 楽人二人が、鈴と扇を持って舞います。
湯加持 けんばらいを以て釜を祓う 七五三の笏拍子の後、楽人が左右の膳のけんばらいをとって、塩と散米をふりかけ、けんばらいで祓って天津祝詞を唱えます。
湯箒でお釜を祓う 湯箒をとって、お釜をかき廻して祓います。
五方拝 湯箒を両手に二本づつ持ち、お釜の湯につけて、正面、二の座、三の座、四の座、再び正面に向けて、湯箒を山形に交叉して、前に進んだり、後ろに下がったりして、湯箒を左右にぱっと開いて礼拝の動作を5回繰り返します。
湯箒逆順 湯箒四本を右手にとり、湯をつけた湯箒を打ち付けるように正面に湯をかけ、順にめぐり、次に逆順にめぐり、両手に湯箒を持ち、山形に掲げ順逆にめぐります。
天道舞
天道神社に御湯を献げる舞です。
天道舞以降の神子舞は、どれも同じような舞で、それぞれに歌われる神歌が違うことと、託宣が唱えられる舞があることです。この時歌われる神歌は、24〜5種ありますが、約半分は共通のものです。
神子は天冠、冠当て、下髪、緋色の舞衣、緋色の袴、錦地模様のちはや、白足袋を着けます。
礼拝とねり 七五三の笏が打たれた後、神子が鈴と閉じた扇を持って礼拝し、太鼓打ちが、囃子にあわせて「前歌」を歌います。鈴とすぼめた扇を右手に持ち、それぞれの袖を反対の手でつかみ、両袖を重ねて拝します。
鈴とつぼめ扇と 次に、左手にすぼめた扇を、右手に鈴を持ちます。鈴を鳴らして、まず正面を拝し、二の座、三の座、四の座と順に拝し、再び正面に拝します。
鈴と開き扇と 次に扇を開いて、正面、二、三、四の座、正面に拝します。
扇のみ。神歌の段 次に、扇のみを持ち、神子と神楽主が「立ちかはるや、早や立ちかはるや、おせくらの、ちくらの前に…」と天道の神歌を歌います。
次に、神子は正面を向いて、しばらくた立ったまま「御座やさむろふに、御祈祷には…」と扇を翳して歌います。同じ動作を繰り返しながら、他の神歌も歌われます。
お手かけと湯箒と 次に、神楽主より大幣束(「お手かけ」といわれる)と湯箒を二本受け取り、大幣束は左手に、湯箒は右手に持ち、湯箒を湯釜につけ、左右に振って拝します。大幣束と湯箒をまとめて右手に持って正面、二の座、三の座、四の座、正面と舞っていきます。
湯の花 次に、神楽主が「ただ白妙の御幣なるもの」と歌うと、神子も「御幣なるもの」と歌い、湯箒を釜につけ、「御湯の花水参らする」と、3〜4首の神歌を歌います。
五方献湯 次に、湯箒を左右の釜に何度もつけ、正面、二の座、三の座、四の座、正面と繰り返して、最後に持ち物を置き、座って礼拝します。
湯加持から天道舞まで20数分です。
湯加持・伊勢舞 これらは、湯加持と神子舞が対になっていて、上記「湯加持」「天道舞」と同じですが、それぞれの神子舞の神歌が違います。
保呂羽山舞の途中で、斎主が垂纓の冠、狩衣、袴、笏のいでたちで神子の託宣が終わり献湯になる頃、神前正面で御饌祝詞を唱えます。
湯加持・保呂羽山舞
湯加持・御嶽山舞
湯加持・高丘山舞
中入 休憩です。楽人には御神酒、夜食が出されます。祭服をとってくつろぎます。
この間に、米を入れた朱塗りのタライが持ち込まれ、「よーいやさっさ、よーいやな」と、数人がかけ声をあわせて、櫂でタライの中の米をとぎます。
この時、米とぎ歌「あべでァばち、ヤ−エ、横手の町さ炭つけて…」。八沢木節「八沢木、沢目の炭焼き娘…」等が歌われます。
山之神舞 夜の丑の刻に舞われる舞で、霜月神楽の舞の中で、最も重要な舞で、山之神の舞手が登場します。鳥甲・直面・白狩衣・軽袗・襷掛・脚絆・手負いをつけ、1時から1時40分頃まで、約40分にわたって舞を舞います。次の12の舞からなっています。
鈴とつぼめ扇の順逆 鈴と閉じた扇を持って舞い始めます。途中で拍子が何度も変わり、それに合わせて舞います。座って赤い襷を掛けます。
その場順逆 立ち上がって、扇を持ち替えたり、開いたりしながら舞います。拍子が変わると座ります。
甘酒献上 右手に湯箒、左手に甘酒を入れた銚子を持ち神歌に合わせて舞います。拍子が変わると、正面を向いて、甘酒を湯箒につけてはじきます。二の座、三の座、四の座に向かっても同様の所作を行い、最後に再度正面に向かって同じ所作をして、座って湯箒、銚子を置きます。
幡順逆 背中に刺した幡を抜き、2本合わせて持ち、振り回しながら舞います。次に、桂男の幡を右手に、三十六童子の幡を左手に持ち座ります。
びっこ引き順逆 立ち上がって、二本の幡を十字にし、びっこひきで舞います。
幡納め 神楽長が、山の神の幡に拍手、礼拝し幡を受け取ります。
山神幣の祓い、無手順逆 鳥兜を脱ぎ、鉢巻きをすると、後見が「山の神の御幣」を取り出し、山の神に渡します。山の神は幣を左右に振って三度拝します。御幣を斜めに背中に刺して、拝します。
飛び跳ね順逆 両手には何も持たずに、飛び跳ねながら舞います。
つぼめ扇、開き扇の順逆 閉じた扇を右手に持って舞い始めます。次に扇を開いて舞います。
鈴、扇の五方舞 右手に鈴、左手に扇を持って舞います。
撤供五方 太鼓打ちから、餅が入った椀を受け取り、この椀を持って舞ながら、まず正面に餅をまきます。さらに、二の座、三の座、四の座にも餅をまきます。
山神幣五方 幣を右手に持ち、びっこ引きで正面、二の座、三の座、四の座を幣で払い、最後に神楽長が幣を受け取り山之神の舞が終わります。
神入舞 楽人が出て、烏帽子の上から鉢巻きをして、神楽長から太刀を受け取る。一振りは腰に差し、もう一振りは、半分まで抜いて舞います。
神歌が入ると、手にしていた太刀を置き、無手で舞います。途中で御神酒をいただき、たすき掛けになります。太刀を抜き、くるくる回しながら舞い、小刀も抜いて、太刀を右手に、小刀を左手に持って、両刀をくるくる回しながら舞います。
湯加持・辺津神舞 三の座より一人が出て湯加持をします。この時、黒塗りの飯櫃のふたに味噌糟と餅をのせたものを、お釜の前に供えます。
神舞は、神子の舞で神歌とともに舞います。
湯加持・壱之釜湯立式 四の座から一人が出て湯加持をします。
壱之釜湯立式は神子舞で、今までと同じです。
湯加持・弐之釜湯立式 三の座のものが出て湯加持をし、そのあと、壱之釜湯立てと同じように神子の舞が行われます。
湯加持・参之釜湯立 二の座のものが出て湯加持をし、そのあと、壱之釜湯立てと同じように神子の舞が行われます。
剣舞 神子二人が出て、神楽長より剣を受け取り、舞います。
神歌「暁のひお鳥声に目は覚めて、鎧たたんで袖を枕に…」と託宣「これは只今…」を歌います。
次に、剣を神楽長に戻し、神子は鈴と湯箒を持って、神歌「東方形にも入ります道には綾をはえ…」歌います。次に、湯箒と幣を持って、二の座・三の座・四の座と舞います。
祝詞(斎主) 斎主が垂纓に狩衣をまとい、神座の前で神楽祝詞を奏上します。
奉幣式 楽人が、保呂羽山・御嶽山・高岡山の御幣を、それぞれ斎主に渡して、祓います。
奉幣式舞 楽人の一人が三体の幣束を持って舞います。
神送 米を入れた一升枡と幣や湯箒を釜の前に供え、神楽長が小刀で四方に張り巡らしてある注連縄を切ります。神歌「しめ切るや しめ切る刀はさえ刀 幸いここに切れる小刀…」
お供頂戴 三社のお供えを下ろし、昆布を二つ折りにして「七浜や八浜の浦のしほ昆布 …」の歌を歌いながら包丁で切り、切った昆布は、さらにお供えの餅と一緒に切り、祭員一同が、御神酒とともにいただきます。
恵比寿 神楽長と神子の前に膳が出され、神楽長が天津祝詞を唱え、神酒と肴をいただきます。烏帽子・恵比寿面・白張・袴姿の恵比寿が竿で二人の膳の鰰を釣り上げ、篭に入れます。
打身祝言 神楽座が片付けられ、斎主夫妻を正面に、コの字型に祭員、関係者が座り、神歌「インヨ−面白や 肴には浜の真砂の数よりも 尚ひさひさと祝いなるもの 祝いなるもの インヨ−」「霜月は霜をいただく八乙女の 心もすめるあさくらの声 あさくらの声 インヨー」を歌い、一同杯事があって、収めの舞「収めおく 国々なれば収めおく 四?の波も静かなるもの 静かなるもの いんよ−」
高砂、四海波などの謡がありすべての神事が終了します。
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