西浦田楽
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地能
庭ならし 獅子舞 地固め 地固めもどき つるぎ
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つるぎもどき 高足 高足もどき 猿舞 ほだ引き
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船渡し 鶴の舞 出体童子 麦つき 田打ち
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水口 種まき よなぞう 鳥追い 殿舞
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そおとめ 山家そおとめ たねおり くわとり 糸ひき
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餅つき 君の舞 田楽舞 仏の舞 治部の手
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のたさま 三番叟
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はね能
高砂 しんたい 梅花 山姥 観音の御法楽
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猩々 くらまてんごん さおひめ やしま ののみや
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はしべんけい
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しずめ
ししまい しずめ ひのお みずのお
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2008年2月24日の月の出(午後9時頃)から翌25日の日の出(午前6時半頃)まで行われる西浦田楽を見に行きました.浜松市天竜区水窪町奥領家の観音堂で行われます.バスの便もないので,車で出かけることにしました.
 いつものように伊勢湾岸道東海ICから入り,浜松ICから県道を二股まで.そこから国道152と473号の重複区間になりますが,ひたすら国道152を北上!します. 途中「あっ!城西駅だ」.そうです.昨年「今田の花の舞」を見に来た時降りた駅です.歩いた時は15分くらいかかった,城西小学校がすぐ左手に見えてきました.「車だとこんなに速いんだ!」と,改めて車の威力を感じました.
 ナビが「目的地周辺です.運転お疲れさま」と言ったので,注意して車を走らせました.もちろんナビには観音堂は登録されていませんので,地図上で近い点を入力したのですが,それらしき場所が見あたりません.確か廃校になった西浦小学校が駐車場になっていると言うことだったんだけど,周りは真っ暗闇で皆目見当が付きません.そのままゆっくり走っていくと,トンネルが見えてきました.西浦小学校を通り過ぎてしまったようです!Uターンしてゆっくり走っていくと,幟幡が立っていたので,車を降りてよく見たら「西浦田楽会場」の看板が立っていました.狭い登り口を入っていくと西浦小学校です.
 車を止めて,防寒具を着込んで,荷物を持って観音堂に向かいました.観音堂にはすでに,三脚や脚立が並んでいます.区画がしてあるわけではありませんので,邪魔にならないだろう!と思うところに低い脚立と三脚を立てて場所取りをしておいて,たき火が焚かれている幕屋で,途中サービスエリアで買った弁当を食べて腹ごしらえをしました.
 午後9時近くなって能衆が松明を持って観音堂に上がってきます.いよいよ田楽の開始です.

 地能の「庭ならし」から始まり「御子舞」「地固め」と続いていきます.14番目の「麦つき」から26番目の「餅つき」までは,実際の農耕の様子をあらわす田遊び系の演目が続きます.途中の22番目の「山家そおとめ」が終わると,「くらいれ」といって小1時間休憩になります.その間に車まで戻って,寒さに備えるためさらに防寒具を着込みました.
 23番目の「たねおり」から再開です.29番目の「仏の舞」から33番目の「三番叟」まではすべて面の舞です.なかでも,「仏の舞」は舞があるわけではなく,6人の仏の面をかぶった能衆と介添え役が,舞庭を廻るだけなのですが荘重な雰囲気が漂い,厳粛な気持ちにさせられます.
 33番目の三番叟が終わるったのが午前5時前.休憩も含めて約8時間です.次の「高砂」からははね能になります.

 はね能は「高砂」から「橋弁慶」まで11の演目がありますが,すべて面を付け,途中に謡が入ります. 能楽の要素が感じられて非常に興味深い演目でした.
 演目の順番は最初の「高砂」から「梅花」までは決まっていますが,それ以降は特に決まりがありません. それぞれの演目は,最初笛・太鼓に合わせて舞い,途中で謡が入ります.この謡の時は笛も太鼓も入りません.謡が終わる時,謡手の合図で笛・太鼓が再び奏され,それに合わせて再び舞が舞われ退場する.と言うパターンです.
 7番目の「くらまてんごん」が6時頃で,空がいくらか明るくなってきます.夜が明ける前で一番寒さが身にしみます.8番目の「さおひめ」.9番目の「やしま」の頃になると,「しずめ」では,見物人が山側に移動させられることを見越して,見物人は少しずつ移動を始めます.気が付いた時には,殆どの見物人は移動が終わっていて,今移動するとはね能のお終いの方の演目が,場所的にうまく撮影できそうもないので,最後まで同じ場所で撮影しました.
 「高砂」が始まったのが午前5時過ぎ.はね能最後の「はしべんけい」が終わったのが午前7時過ぎ.約2時間です.
 
 「はしべんけい」が終わると,能衆に観音堂と楽堂の間に張ってあるクソバズルより山側に入るように指示されます.昔から,しずめの時クソバヅルより中にはいると首が飛ぶと言われ,能衆もこれより外に造られた楽堂の中に入ります.

 最後は「しずめ」です.「しずめ」はお招きした神様にお帰りいただく神事で,「獅子舞」から「みずのお」まで4つの演目がありますが,非常に厳粛な雰囲気の中で行われます.周りはすっかり明るくなってはいますが,空気は凍ったように身にしみます.これから始まる「しずめ」に,緊張した空気が漂います.
 なかでも,「しずめ」は谷を背にしてしずめの面をかぶり,咎め役の大声での問いかけに対して,しずめは小さな声で,なにやらつぶやいた後,上を向いて「おおおー!」と唸り声を上げます.まさに,しずめ役の背の後に連なる山々を越えて,「せっかく楽しんでいるのに,もう帰れとは一体どういう事だ!」と神々がいやいや帰えられて行くように感じられて感動しました.
 「ししまい」から最後の「みずのお」まで,約15分ですが,非常に緊張した中で行われ,時間も忘れあっという間に終わってしまった感じです.

主な演目の解説と感想です.それ以外の演目については下の「山車とまつり」の『西浦田楽』へのリンクをご覧ください.
「剣のもどき」−剣のもどきのつるぎは木刀です.刀身のみねの方が黒く塗られ,刃の方はギザギザになっています.おもちゃの刀のようです.
「船渡し」−これは舞ではありません.観音堂から大松明に向かって綱が張られています.能衆の「ヨイサ!ヨイサ!」の掛け声で,先端に観音様の火が移された宝船が,綱を渡っいって大松明に点火されます.同じような方法で新野の雪祭りでも,大松明に火を付けます.
「よなぞう」−牛買いのよなぞうと親方のててっごの掛け合いがあった後,よなぞうは牛を買って連れてきますが,牛が暴れて,観客の中につっこんだり,そこら中を走り回ったりします.牛役は牛の顔をかいた紙の面を両手に持って走り回りますが,この牛面,長い角が生えているし,顔つきもとうてい牛には見えません.
「山家そおとめ」−背中に人形の赤ん坊(ねんねんぼうしと云う)を背負い,長い箒を持った子守役が幕屋から走り出てくるなり,箒で観客の頭をたたき始めます.一通り叩き終わると,赤ん坊の親と言い合いになります.そのやり取りがおかしく,観客も大笑いします.親役に説得されて子守が再びねんねんぼうしを背負って,また長い箒で観客の頭を叩きまわって退場します.
「仏の舞」−ここから地能の終わりまでの五番は面を付けての舞です.仏の舞は観音様の面を付けた六観音(千手観音・勢至観音・正観音・子安観音・せんじ観音・馬頭観音)がゆっくりと幕屋から登場します.それぞれの観音様には二人ずつ介添え役が付きます.千手観音と馬頭観音は枝に花の木と布を枝に下げた丈竹を持っています.舞はなく舞庭をゆっくりまわって退場します.荘厳な感じがして見ている方も緊張します.
「高砂」−高砂の面を付け,ぶちとよばれる赤い帯状の紙をぐるぐると巻いた祭具と扇を持って舞います.面には白い半紙を短冊状に切って作った髪と髭が飾り付けられています.
「観音の御法楽」−まず,小さい弓矢を持ったしんたい面が登場します.次に赤鬼と白鬼が登場し,3人で舞うと謡になります.しんたいが矢を射ると赤鬼と白鬼は退場し,謡が終わり残ったしんたいが一人で舞います.
「くらまてんごん」−鞍馬天狗です.しんたい面を付け,木の長刀を持った牛若丸が登場し一人で舞います.謡が始まると赤い鬼面を付け,扇とぶちを手にした天狗が現れます.牛若丸と天狗の斬り合いになります.天狗が退場しても牛若丸は残って舞を続けます.
「やしま」−赤鬼と白鬼が木刀を腰に差して登場します.途中謡の部分では二人は木刀を振り上げ立ち会いになります.
「はしべんけい」−赤い鬼面を付け,木の長刀を手にして弁慶が登場します.そこへ,白い上着を頭上にかざし,しんたい面をかぶり,木刀を腰にした牛若丸が登場します.謡になると二人は激しく立ち会いますが,弁慶の長刀が折られてしまい勝負がつきます.牛若丸が退場した後も弁慶は一人で舞い続けます.
このころには,周りは明るくなってはいますが,ストロボを使って撮影しています.
「ししまい」−幕屋から火の王の面を付けた薬師という先導者に導かれて,二人立ちの獅子が登場します.楽堂の前に敷かれたゴザの上で,楽堂に向かって頭を下げます.後,横と向きを変え介添え役が唱え言をして,先導者は後ろ向きのままで後退し,ししを幕屋に導き入れます.
「しずめ」−西浦田楽のうち最も厳粛な神事です.
幕屋から別当が,しずめの面を持って登場し,楽堂の前のゴザに座ります.しずめの面を付け印を結ぶと,楽堂の中から咎め役が「びしゃもんのいでさせたもう…」と大声の問いにしずめ役は上を向いて,苦しそうに唸り声をあげます.その後,介添え役に支えられて後ろ向きのままで幕屋に下がります.
「ひのお」−幕屋より別当がひのおの面と短い鉾を捧げ持って登場します.しずめの時と同じように,ゴザに座り鉾を面の上にかざした後,地面に立て,面と鉾を捧げ持って退場します.
「みずのお」−ひのおと同じように幕屋から別当がみずのおの面を捧げ持って登場し,ゴザに座り扇を閉じたまま面の上にかざし,面を捧げ持って退場します.

 最初の「庭ならし」が始まったのが21時頃.最後の「みずのお」が終わったのが午前7時半過ぎ.途中1時間ほどの休憩がありますが,のべ10時間半ほどです.
 保存会長さんでしょうか?最後の挨拶に,見物していたもの一同の緊張が解けてホッとした表情に戻りました.

 取りあえず撮影に使った機材や,しこたま着込んでいた防寒具を脱いで,車のトランクに放り込んで,帰途につきました.走り始めてしばらくして、あまりにも眠いので天竜川に設けられた駐車帯で30分ほど仮眠,二俣町あたりのコンビニでサンドイッチと缶コーヒーで朝食.浜松ICから東名高速に入り,往きと同じように東海ICを出て11時半頃無事帰り着きました.
 徹夜の祭はさすがに疲れます.お疲れさま.昼ご飯を食べて夕方までベッドに倒れてました.
 なお,見ていただくとわかりますが,今まではトリミングする場合,元の画像と同じ,長辺:短辺を3:2にしていましたが,今回の画像は邪魔な部分を切り取りましたので,必ずしも3:2になっていません.

「西浦田楽」が行われる西浦観音堂はこちら→Map
「山車とまつり」の西浦田楽はこちら→「西浦田楽」