藤守の田遊び
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外祭の儀 的射の儀 天狗 長刀 振取 御獅子
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鍬入 荒田 寄塗 鳥追 山田 徳太夫
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田植 代草 孕早乙女 小編木 早乙女 高野殿
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神子舞 間田楽 猿田楽 宝来 稲刈
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鯛釣り 長刀 御獅子 天狗 .
3月17日(月)国の重要無形民俗文化財に指定されている「藤守の田遊び」を見に行きました.この田遊びについては大井川町のホームページに日程から演目まで詳しく掲載されていましたので,とても役に立ちました.
行事は3月10日の「帳付けの儀」から始まり,14日の「みそぎ」と続き,当日の17日も「内祭の儀」「外祭の儀」「的射の儀」「田遊び奉納」と続きます.そして,翌日の「御供割」で一連の行事が終わります.
古い文献では,寛和元年(985)社殿を設け川除守護神を祀り田遊びが行われたと云われています.その後,元亀年間(1570〜1573)になり,現在行われている田遊びの様式が定まったようです.ただ,その頃は藤守の田遊びには田遊び風流だけでなく,呪師系,田楽系,万歳楽など多彩な芸能が取り入れられていることから,別当寺院法雲寺の延年の行事として行われていたと思われます.
「内祭の儀」は午前11時からなので,これはパス.15時からの「外祭の儀」に間に合うよう,10時半過ぎ家を出発.いつもの伊勢湾岸道の東海ICから.今回は吉田ICで出ることにしました.途中牧之原SAで昼食.吉田ICを出て,県道34,79.国道150で大井川を渡って,約8キロ.大井八幡神社の近くには交通整理の方が,自衛隊の静浜基地飛行場が臨時の駐車場として開放されているので,そこを案内してくれました.自衛隊の基地なので,係りの隊員が数名と地元の方が数名見張っていました.東名高速を降りてから近いこともあって14時前には着いてしまいました.
時間が早いので,場所の確認.
拝殿前の境内に舞台が特設されています.高さ1メートルくらい,舞台の周りには,さらに30センチくらいの間を空けて,横に丸太が渡してあります.今回は,高さ50センチくらいの2段の脚立をイス代わりに持参.舞台の南側に置いて場所を確保.座って撮影するのに丁度良かったです.
境内では,資料が販売されていました.保存会と大井川町教育委員会発行のもので,保存会のものが200円.教育委員会のものが小冊子と2冊で1,000円.後で静岡県内の図書館に調べに行くことを思えば安い買い物.と思い,両方とも購入しました.

2時45分頃から「外祭の儀」が始まりました.
「外祭の儀」は,舞台に薦が敷かれ,天狗によって場が浄められます.天狗役の人は,舞台を清め終わると,太鼓と鼓打ちに変わります.
その後,四座(神社に功績があったものの後継の家.四人),宮司,禰宜が着席し,給仕四人が順に膳を運び,饗応します.約30分.

その後,すぐに「的射の儀」が行われます.
「的射の儀」は神職が鳥居の下に置かれた的に向かって矢を射ます.すべての矢を射終わると弓納人が的場の森に弓と矢を納めに走ります.最初の1本が的に命中.見ている者から拍手喝采が送られます.


ここまでで15時半頃.田遊びが始まる18時までしばらく休憩.
30分くらい前になると,舞台の回りも人が沢山集まってきます.
18時.「田遊び」が始まります.この田遊びは全部で25番と,番外が3番残されていますが,そのうち7番水口申,11番麦搗は現在行われていません.また,最初と最後に行われる番外の「天狗」,1番と24番の「長刀」は,いずれも舞台を祓い清めるものですが,始めのものは,最後まで滞りなく無事演目が行われるように.終わりのものは,無事すべての演目が終わったことを感謝する.また,3番と25番にも同じ「御獅子」がありますが,始めのは祭神の身代わりである御獅子をお迎えし.終わりで行われる御獅子は元の御座にお帰りいただくためのものと思われます.

まず番外の「天狗」が始まります.天狗が登場する前に,松の小枝(?)を手桶の水に浸し,水を撒いて舞台を清めます.次に,枝の着いた青竹を持った二人の天狗が,青竹で床を叩いて舞台を祓い清めます.

2番の「振取(ふっとり)」と3番の「御獅子」は連続しています.振取は獅子が登場するまでのほんの短い間で,演目!と言うより,むしろ役柄と言った方がいいかも知れません.で,この振取.頂に造花を付けた,円錐状の藁で作ったショッコというかぶり物を被り,扇を持って獅子を和ませ慰めます.また,この獅子は実は”牛”と言うことだそうですが,5人立ちで頭は白木づくりです.この獅子殆ど動かず,振取の方にいつも頭を向けてゆっくり体を動かす程度です.五人立ちの獅子は始めてみました.

4番の「鍬入れ」第6番「寄塗」,第12番「代草」は舞台に2人が登場し,拝殿に向かって詞唱を唱えながら,柳の箸に挿した牛の舌餅を抜いて投げるだけの演目です.

5番の「荒田」,第8番「鳥追」は8人が舞台で歌を歌いながら,輪になって回るだけのものです.鳥追いの歌詞はかなり長いです.

11番の「徳太夫」は第9番の「山田」と連続で演じられます.造花の万燈花を付けたショッコを被り,紙蓑を背負い,酒とっくりを持った徳太夫が,田を耕している者に酒を振る舞います.

13番の「田植」は烏帽子を被り,白装束で太刀を腰に差し高下駄を履いた殿は立ったまま,ショッコをかぶった供の者は脇にしゃがんで拝殿に向かって,詞を唱えます.舞台の三方には青竹の御幣を持った者がギッシリとしゃがみ,詞に合わせて舞台を御幣の先で叩きます.豊年を祈願するものです.

16番の「早乙女」は,今年数えで5才になった子が,氏子に加わることの神事です.親に抱かれて舞台に上がり,名前を呼ばれると,正面を向いた神職が子どもを抱きあげ,参拝します.

19番の「棒」は六尺の樫の棒を振り回します.棒の手とよばれる呪術芸の一つです

20番の「間田楽」は8人で舞います.舞台の回りに張ってあった注連縄をはずします.先頭の者は”才取り”といい,烏帽子を被り袴をはきます.手には鼓台を持ちます.残り7名は田圃をかたどる造花を頂に飾ったショッコを被り,手には柳箸を1本持ちます.ただ,最後尾の者は,服装は他の者と同じですが,採りものは先頭と同じ鼓台です.片足で跳ねながら舞う,舞手にとってはなかなか大変な舞です.この舞は,次の猿田楽とともに,田遊びの演目のなかで最も華麗な舞の一つです.

21番の「猿田楽」は,細く割った竹(シナイ)に,赤白の万燈花で飾られたショッコを被り,紙蓑を背負い8人で舞います.この万燈花は桜の花を表しているそうで,舞人の動きに合わせて,揺れたりぐるぐる回ったり,まるで風に揺られるようでとてもきれいです.先頭のものは”才猿”といい,ショッコの正面に猿の面を付けます.田遊び中最も華やかな舞の一つです.

24番の長刀の前に番外の「鯛釣」が行われます.釣り糸の先に本物の鯛をつけ,それを観客に向かって投げます.観客が鯛の口にお賽銭をくわえさせると,大喜びしてお賽銭を懐に収めていました.この演目はみている方からいろいろヤジが飛び,釣り人も楽しみながら演じていました.写真をよく見ると,鯛の口からお札がのぞいています.>それと,駿河神楽の恵比寿大黒の舞と同じような演目で,番外とは云え同じような演技が,田遊びの中にも取り入れられていることに,興味をおぼえました.

27番の「御獅子」は,祭神の身代わりである御獅子を慰め,元の御座にお帰りいただくように振取が先導するものです.また,この時は御獅子のお供餅を扇に載せて舞台の外に投げ,その年の吉凶を占います
「長刀」,「御獅子」と番外の「天狗」は最初と最後の2回行われます.
これ以外の演目の解説は,下の「山車とまつり」の『藤守の田遊び』をご覧ください.

最後の演目である天狗が終わったのが22時半頃.保存会長さんの挨拶がありお開きです.
帰りも,吉田ICから東名へ.行きと同じ浜名湖SAで一休み.伊勢湾岸道東海ICで出て,家に着いたのが午前1時過ぎでした.

藤守の大井八幡神社の周りには駐車場が少なく,祭り関係者用の駐車場は,ちゃんと確保されているのですが,一般の観客は自衛隊静浜基地飛行場の一部分を解放してくれています.しかし,入り口には「午後10時には門を閉めます」旨の張り紙がしてありました.21時過ぎに,「車を駐車場から出してください」の放送があって急いで車を出して,いったんは道ばたに止めたのですが,ちょっとやばいかな?と思って,祭り関係者用の駐車場が空いていそうだったので,そちらに入れました.お陰で,22番の「宝来」の最初の方が見られませんでした.残念!!
yoshikとしては,本当は公共交通機関で来たいのですが,その日のうちに,帰れないので,致し方なく車で来ているので,せっかく駐車場として貸してくれるのだから,田遊びが終了するまで止めさせてくれればいいのに!と思いました(愚痴)
藤守の田遊びが行われる大井八幡神社はこちら→Map
「山車とまつり」の藤守の田遊びはこちら→「藤守の田遊び」