仁科神明宮太々神楽
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仁科神明宮−寛永十三年(1636)に造営され,江戸時代初期の端整な建築物です.神明造りの建築物としては我が国最古のものであり,唯一の国宝に指定されています. .
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剣之舞−両手に剣を持って勇壮に舞います.舞台を祓う舞です. 岩戸神楽−天照大神の岩戸隠れの神話に基づいて物語が進んでいきます.
麻神 鈿女 手力男 天照大神
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水継−高天原天之真名井の水をいただき,御湯神楽を奏します. . 五行之舞−中国の陰陽五行説に則った舞で,五色に色分けされた神々が鈴と幣を持って舞います .
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幣之舞−右手に剣左手に幣を持って舞います.祓いの舞です 龍神神楽−神話「海彦・山彦」の一部分を神楽で演じます.中程ではタコ・エビ・タイの狂言が挿入されています
豊玉姫と玉衣姫 タコ・タイ・エビ エビ 彦火々出見尊 龍神
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道祖神−ぞうぎは艮の方へ矢を射,大宝は未申の方へ杵をつきだし悪魔を打ち鎮めます . 太平楽−天下泰平・五穀豊穣・悪魔退散を祈る神楽です .
ぞうぎ 大宝
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9月21日.長野県大町市の仁科神明宮で太々神楽が行われたので,見に行きました.仁科神明宮の神楽は2〜3年ほど前から見に行きたいと思っていたのですが,今年やっと実現しました.
車だと中央高速・長野道を約250キロ.休日なので料金は1000円.ですが,シルバーウイーク中の休日.渋滞が予想されることから公共交通機関にしようとネットで調べてみました.
現地はJR安曇沓掛駅から仁科神明宮まで約2.5キロ.バスはなし.30分程度歩けばいいのでこちらは大丈夫.
JR安曇沓掛駅まではJRの普通電車だと間に合いそうもありません.名古屋−松本館の高速バスも間に合いません.ので,特急「しなの」にすることにしました.名古屋駅発7時と8時の「しなの」なら間に合います.指定券はすでに売れきれ.自由席に座るためには,取りあえず7時の電車に乗るつもりで名古屋駅に行き,座れないようならそのまま8時の「しなの」まで並んで待っていよう.ということにして,朝5時半出発.もちろん市営バスはまだ動いてないので金山まで歩き.名古屋駅の10番ホームに着いたのが6時15分頃.自由席は2両だけです.乗り場を探すと,それぞれの入り口にはまだ数人ずつ.7時の電車で十分座れます.さすがに6時45分頃になると,かなり行列も長くなって座れない人も出てきそうです.
松本着9時6分.大糸線の大町行きが9時10分.何と乗り換え時間が4分しかない.跨線橋を半ば走って乗り換え.東海道線の米原での乗り換えも3分とか4分とか.何でもう少し乗り換えの時間を長くとらないんだろうか?????
と,ぶつぶつ言いながら,ちょうど席が空いていたので座ることができました.電車はワンマンカー.安曇沓掛まで約1時間.10時少し前に到着しました.
駅から100メートルほど戻った信号交差点を左折.両側の黄金色に色づいた稲穂.畦のコスモス.を見ながら県道を東へ.途中高瀬川にかかる宮本橋を渡り,県道交差点へ.信号脇に「仁科神明宮」の大きな標識が立っています.そこからは道が狭くなって上り坂になります.分かれ道のところには標識が立ててあります.7〜800メートルで仁科神明宮につきます.駅から約2.5キロ.40分ほどで到着.
なかなか立派なお社で,石段をあがっていくと拝殿.本殿が見られます.中門.釣屋.本殿が国宝です.
神楽は拝殿右手の高さ40センチくらいの壇の上の神楽殿で行われます.床までの高さが5〜60センチなので,長いすが置いてある場所からは1メートル程度高くなります.
ひょっとしてあるかな?と思っていた食べ物を売っているようなお店は全然なし.まだ時間があるので,県道まで戻ってみました.信号のところで左右を見渡すと,右手の方になにやら看板が.行ってみるとJAの直売所.中に入ってみたのですが,材料ばっかり.レジの人に「何か弁当のようなものはありませんか?」「たまにお寿司なんかがあるんですが,今日はあいにく何もないですね.」みると,オヤキがあったのでひじきとしいたけを2つ買って,表の自販機でペットボトルのお茶を買って,神社へ.このオヤキはなかなかおいしかったです.が,松本でもう1本電車を遅らせて弁当を買っておくべきでしたね.
12時頃地元の子ども御輿があがってきます.宮司さんにお祓いをしてもらい,お下がりをもらって大喜びの様子.
13時少し過ぎからいよいよ太々神楽の始まりです.この日は,85mmF1.8のレンズを持って行っていたので,フラッシュを使わずに殆どこのレンズで撮影できました.明るいレンズはGoodですね.
終了は15時半頃.荷物を片付けて沓掛駅へ.途中,県道脇に大きな栗の木があり,毬栗が落ちていたので数個拾って家へのお土産にしました.帰りは予定より早い16時5分発の電車に間に合いました.
松本からは,19時10分発の高速バスが予約してあったので,出発まで2時間近くあります.夕食を済ませてJR駅前でしばし休憩.高校や大学の頃上高地に入るため松本駅は,数回通過しています.でも,もう数十年も前のこと.全く記憶がありません.
高速バスは,満席ではなかったので,隣の席の方は後ろに座られたのか,2席を一人で座ってこられました.
高速に入ってしばらくすると,やっぱり渋滞.名鉄バスセンターに着いたのが24時5分頃.1時間40分近くの遅れです.運転手さんご苦労様!!

次第は
剣之舞−この舞は,一人で両手に剣を持って勇壮に舞います.最初に舞われるので祓いの舞ともいわれています.謡はありません.
岩戸神楽−天照大神の岩戸隠れの神話に基づいています.尉・麻神・鈿女命・手力男命・天照大神の五人で演じます.尉・麻神がまず登場し,天照大神が岩屋に隠れてしまったので,世の中が真っ暗闇になって困るので,鈿女に舞を舞わせようと相談します.呼び出された鈿女命が岩戸の前で舞います.手力男命が鉄棒を持って登場し,天照大神が外の様子を見ようと,岩戸を少し開けたところを,岩戸を開け放ちます.すると,天照大神が出てきて万事解決する.この曲では能に見られるような謡が入ります.
水継−尉と姫の二人舞です.尉は笏を持って,姫は檜扇を持って登場します.姫は途中で檜扇と柄杓を持って舞います.
岩戸開けの日は,万物の事始めなので,湯を立てたいが,国中の水は不浄なので高天原天の真名井の水を汲み.神楽を奏するというものです.
これも謡が入ります.
五行之舞−中国の陰陽五行説に則った舞で,天地万物を開いた神といわれる
中央には黄の面・黄の狩衣・黄の幣の土の神
東方には青の面・青の狩衣・青の幣の木の神
南方には赤の面・赤の狩衣・赤の幣の火の神
西方には白の面・白の狩衣・白の幣の金の神
北方には黒の面・黒の狩衣・黒の幣の水の神
の五神の舞です.謡はありません.
幣之舞−右手に剣,左手には白い幣を持って舞います.剣之舞と殆ど同じで,祓いの舞です.謡はありません.
龍神神楽−浦島神話の原型である海彦山彦の神話に基づいたものです.彦火々出見尊・龍神・豊玉姫・玉衣姫・エビ・タコ・タイの七人で演じます.最初に彦火々出見尊が登場し,兄の釣り針をなくしてしまったので,海に潜って探しに行きます.海の底で豊玉姫・玉衣姫に会い,竜宮海神宮に案内されて歓待されます.次にタコとエビが狂言風に,なくした釣り針を探しに彦火々出見尊が現れて,豊玉姫が妊娠したこと.そこへタイが現れ口の中に針が残っていることを打ち明けます.それを聞いたエビが針を抜いて龍神様に献げます.釣り針を返してもらった彦火々出見尊が鰐に乗って帰ります.ここで面白いのは,上の「龍神神楽」の彦火々出見尊の画像を見ていただくとわかりますが,いわゆるワニに乗っていることです.果たして神楽が始められた頃,このようなワニが日本にも知られていたのでしょうか??
謡い,狂言があります.
道祖神−ぞうぎ(青の鳥兜をかぶり弓矢を持ちます)と大宝(赤い鳥兜をかぶり木杵を持ちます)の二人が登場します.ぞうぎは大宝に,「艮の方向に九万八千七十二の悪神がいるので,この悪神を射鎮めなさい」.と教え大宝は「未申の方を木杵で突き鎮めよう」と二人で悪魔を鎮めます.
太平楽−ぞうぎ,大宝と神楽を演じられた方々が神楽殿に整列し「神と君との道直ぐに,萬歳楽の御代なれば,千秋楽を諷ふよ,心耳にすめる鈴の声,鼓の音は颯々の声に夢さめて,かわらぬ御代こそ目出たけれ」と謡います.
大蛇の舞−江戸時代まで末期まで行われていましたが,現在は途絶えています.

仁科神明宮の太々神楽は,いつ頃から行われてきたかは明らかではありませんが,かなり古い時代(安土桃山時代?)から行われていたようです.
すべて神話から題材を取っており,面,装束を着け笛・太鼓に合わせて舞われますが,途中に謡が入ったり,狂言が入ったりする演目があり,非常に興味深く拝見させていただきました.
現在神楽は宮本神楽員の方々によって伝えられています.昭和44年に長野県無形民俗文化財に指定されています.

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「山車とまつり」もご覧ください→仁科神明宮太々神楽