長野県大町市社宮本・仁科神明宮 太々神楽
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2009年9月21日.長野県大町市社宮本の仁科神明宮で太々神楽が奉納されました.
仁科神明宮の創建は,明らかではありませんが,後冷泉天皇の永承三年(1048)に御厨が建立されたのがその起源ではないかといわれています.祭神は天照皇太神の一神です.
現在の仁科神明宮本殿と中門当時の建物で,現存する最古の神明造建築として,昭和28年に国宝に指定されています.

太々神楽は,いつ頃から行われてきたかは明らかではありませんが,400年以上前から行われているといわれています.
すべて神話から題材が取られており,面,装束を着け笛・太鼓に合わせて舞われますが,途中に謡や狂言が入ったりする演目があり,非常に興味深いものです.
現在神楽は宮本神楽員の方々によって伝えられていて,昭和44年に長野県無形民俗文化財に指定されています.
次第は
剣之舞−この舞は,一人で両手に剣を持って勇壮に舞います.最初に舞われるので祓いの舞ともいわれています.謡はありません.
岩戸神楽−天照大神の岩戸隠れの神話に基づいています.尉・麻神・鈿女命・手力男命・天照大神の五人で演じます.尉・麻神がまず登場し,天照大神が岩屋に隠れてしまったので,世の中が真っ暗闇になって困るので,鈿女に舞を舞わせようと相談します.呼び出された鈿女命が岩戸の前で舞います.手力男命が登場し,天照大神が外の様子を見ようとしたところを,岩戸を開け放ちます.すると,天照大神が出てきて万事解決する.この曲では能に見られるような謡が入ります.
水継−尉と姫の二人舞です.尉は笏を持って,姫は檜扇を持って登場します.姫は途中で檜扇と柄杓を持って舞います.
岩戸開けの日は,万物の事始めなので,湯を立てたいが,国中の水は不浄なので高天原天の真名井の水を汲み.神楽を奏するというものです.これも謡が入ります.
五行之舞−中国の陰陽五行説に則った舞で,天地万物を開いた神といわれる
中央には黄の面・狩衣・幣の土の神
東方には青の面・狩衣・幣の木の神
南方には赤の面・狩衣・幣の火の神
西方には白の面・狩衣・幣の金の神
北方には黒の面・狩衣・幣の水の神
の五神の舞です.謡はありません.
幣之舞−右手に剣,左手には白い幣を持って舞います.剣之舞と殆ど同じで,祓いの舞です.謡はありません.
龍神神楽−浦島神話の原型である海彦山彦の神話に基づいたものです.彦火々出見尊・龍神・豊玉姫・玉衣姫・エビ・タコ・タイの七人で演じます.最初に彦火々出見尊が登場し,兄の釣り針をなくしてしまったので,海に潜って探しに行きます.海の底で豊玉姫・玉衣姫に会い,竜宮海神宮に案内されて歓待されます.次にタコとエビが狂言風に,なくした釣り針を探しに彦火々出見尊が現れて,豊玉姫が妊娠したこと.そこへタイが現れ口の中に針が残っていることを打ち明けます.それを聞いたエビが針を抜いて龍神様に献げます.釣り針を返してもらった彦火々出見尊が鰐に乗って帰ります.謡い,狂言があります.
道祖神−ぞうぎ(青の鳥兜をかぶり弓矢を持ちます)と大宝(赤い鳥兜をかぶり木杵を持ちます)の二人が登場します.ぞうぎは大宝に,「艮の方向に九万八千七十二の悪神がいるので,この悪神を射鎮めなさい」.と教え大宝は「未申の方を木杵で突き鎮めよう」と二人で悪魔を鎮めます.
太平楽−ぞうぎ,大宝と神楽を演じられた方々が神楽殿に整列し「神と君との道直ぐに,萬歳楽の御代なれば,千秋楽を諷ふよ,心耳にすめる鈴の声,鼓の音は颯々の声に夢さめて,かわらぬ御代こそ目出たけれ」と謡います.
大蛇の舞−江戸時代まで末期まで行われていましたが,現在は途絶えています.

「お祭り見てある記」もご覧ください→仁科神明宮太々神楽
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その1 その2 その3
仁科神明宮/剣の舞/岩戸神楽 水継/五行之舞/幣之舞 龍神神楽/道祖神/太平楽