新野の雪祭り
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お上り 神楽殿の祭り 大松明起こし がらん様の祭り 本殿の祭り
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大松明点火 乱声 幸法 もどき 競馬
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お牛 松陰 正直切り 街道下り
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神婆 天狗 八幡様 しずめ かじ
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折口信夫氏によって「新野の雪祭り」として紹介されて一般に知られるようになった,阿南町新野の雪祭りを1月14日〜15日にかけて見てきました.
寒い時期で,防寒具も準備していかなければならないこともあって車で出かけました.中央高速恵那ICで降りて,根羽・売木を経由して新野に入りました.丁度この辺りは盆地なんでしょうか.広々として明るい感じがします.
車で知らないところに行くと一番困るのが駐車場です.今回も伊豆神社の下まで行ったのですが駐車場がわからず,やむなく道の駅に止めて歩いて登ったのですが,途中ですれ違った方が「上に車が止められますよ」と教えてくださったので,道の駅に戻って,神社のすぐ下の駐車場に移動させました.荷物が手近に置けてずいぶん便利でした.
祭りは,前日13日の諏訪神社例祭への「お下り」から始まっています.そして14日伊豆神社の例祭への「お上り」で,いわゆる「雪祭り」が始まるわけです.
伊豆神社では,まず笛・太鼓に合わせて「神楽殿の祭り」として東上手組のビンササラ,西上手組のビンササラが奉納されます.そして,ろん舞・市子,後立の万才楽…など子どもからお年寄りまで,舞人が次々と代わって舞い続けられます.この神楽殿の祭りだけでも立派な「祭り」として成り立つのではないか.と思いました.
ただ,この神楽殿は境内から2メートルほどの高さだし,周りには舞人や子どもが座っていて舞がよく見られなかったのは,ちょっと残念でした.
この間に,地元の方が開いている売店でかけそばと鶏のうま煮で晩ご飯.この鶏のうま煮は豚汁の豚肉の代わりに鶏肉が入っていて,ゴボウやにんじんはぶつ切りで丸いまま.めっぽううまかったです.これが300円とは.500円のかけそばより断然お得だと思いました.
当日の祭りは,まず
「お上り」から始まります.笛,太鼓などに合わせて,祭り関係の方々が伊豆神社へ上ってきます.
「神楽殿の祭り」笛太鼓に合わせてビンササラを持った舞とか,小太鼓を胸に付けた子どもの舞とかが2時間以上も続きます.
「大松明起こし」が行われます.大松明の上に,競馬役・天狗役の人々が乗り,本座・新座の人たちが両方に別れて綱を引き,祝儀締めを行います.そのあと,クレーンを使って大松明を立てます.
「がらん様の祭り」は,がらん様は本殿の裏山の急斜面を登ったところにあり,その前で舞と簡単な神事が行われます.提灯の明かりだけの中,フラッシュの光が眩しいです.
「本殿の祭事」がらん様の祭りで,もどきの舞が舞い始められると,本殿の扉が開けられ御幣奉戴式が行われます.
「乱声」庁屋の周りにいた消防団員らが,いきなり庭開きを催促するように,「ランジョウ ランジョウ」と叫びながら,庁屋の板壁を薪などで叩きます.あまりひどくたたいて板壁の一部が割れてしまいました.
「大松明点火」大松明の頂上まで張られたひもに,小さな松明をつけた木製の船が,ひもに引かれて大松明の頂上目指して上っていきます.頂上付近で消防団員の方が,船の小さな松明から大松明に火を移します.
「庭開き」と進んで,いよいよ
「幸法(さいほう)」の登場です.境内には沢山の人が詰めかけ,今や遅しと待ちかまえています.面形をつけ松の枝と扇を持って幸法が登場します.見物人が周りにドッと詰めかけ,出遅れた管理人は,仕方なく後のほうに脚立を立てて撮影.見物人からは『今年のおとっつぁまは素晴らしい!』とか『なかなか腰つきがいいぞぉ!』だとかヤジがいっぱい飛びます.幸法の舞は,この祭りのメインと云われるように,何度も出入りし,最後は田楽のビンササラを連れて,拝殿の前で一緒に舞いますが,『まだ修行がたらんぞ!』という声に,腰に差した木製の男根を持って,境内にいる女性にタッチしまくります.そのたびに黄色い声があがり,何と2時間近く舞います.その間に管理人も,一番前に出ることができ,写真の撮影もできました.幸法が庁屋に入ると
「もどき」の登場です.幸法のまねをして,同じように舞いますが,何処かちぐはぐな感じがします.でも,小学生か中学生位の子どもが舞っているらしく,幸法に比べてきびきびと,軽やかに舞っていました.このもどきの舞も2時間を超えます!続いて
「競馬(きょうまん)」馬の作り物を腰に付け矢を放ちます.また,2頭が口を付けたり,お尻をすり合わせたりします.子孫繁栄を願った所作と思います.続いて
「お牛」冠束帯を付けた宮司が競馬と同じように,牛形を腰に付けて登場し,矢を射ます.
「翁」赤い布で頬かむりをし,翁面を額に付けた翁役が登場します.
「松陰」翁の一種です.翁と同じように,赤い布で頬かむりをし,白い髭を生やした松影の面を額に付けて登場します.
「正直切り」これも翁の一種です.赤い布で頬かむりをし,白い髭を生やした翁面を額に付け,中啓を持って登場します.
「海道下り」では,息子とじい様との二人連れが,旅をしている途中で,「その着物シラミがわいとりゃあせんか?」とか「じっさまは老人ホームに連れてけ!」とか,てんでに見物人がはやし立てます.面白おかしく掛け合いしながらお参りをして帰っていきます.
「神婆(かんば)」は婆と爺が登場し,爺と婆は抱き合います.そこへ,娘が登場し爺婆の周りを回って帰ります.子孫繁栄と五穀豊穣を願う舞です.いよいよ鬼の登場です.
「天狗(てんごう)」太郎鬼,次郎鬼,三郎鬼が,それぞれ斧,両槌,片槌を持って登場し,それぞれの持ち物を高く掲げて絡み合わせます.神前で,禰宜衆と問答をしますが,禰宜衆に言い負かされて,庁屋に引き上げます.この鬼の口に朝日が当たると縁起がいいと云われています.花祭りの鬼と禰宜との問答に比べて,禰宜さんたちはニコニコしながら問答をしていて,ずいぶん和やかですし,3匹の鬼の顔も何となく滑稽で親しみが持てます.
「八幡」八幡様と駒が登場します.駒を薦に伏せると,背中を餅でなでたり,呪文を唱えたりして,駒の後を何度か回ってまたごうとしますが,『またがるにはまだ早えぇぞ』という声に,何度か躊躇し最後にまたがると,『今年もいい年になるぞ』.八幡様は駒を連れて退場します.田畑を荒らす獣害を鎮める意味があるといわれています.
「しずめ」しずめ役と獅子が登場し,八幡様の駒と同じように薦の上に伏せた獅子に呪文をかけ,背中にまたがります.諸々の神様を鎮め,また獣害を収める意味があると云われています.
が,「しずめ」も「八幡」も,管理人としては子孫繁栄のセックスを感じ取ってしまいましたが,考えすぎでしょうか?
最後は「鍛冶」と「田遊び」が同時進行で行われます.
「鍛冶」鍛冶屋の親方とその弟子が,ののしり合っている所へ,仲裁人が入るのだけど,ますます話がややこしくなって,最後に神婆の娘が鼓を持って,話を収め庁屋に戻ります.ここでの,話のやり取りは殆どアドリブで進めているとのことです.
「田遊び」は鍛冶と同時進行で,大松明の元で太鼓を上向きに置き,田遊びの言葉を唱えます.五穀豊穣を祈る行事です.が,鍛冶と同時進行であることと,太鼓の周りに見物の人が多く撮影ができませんでした.

終了したのは朝の9時半頃.

お疲れさま!見る方もやる方も大変しんどい祭りです.
この祭りは,室町の頃伊豆神社の神主が奈良の春日神社の薪能を取り入れて祭りを始めたと云われています.その後,伊勢の国から田楽を取り入れ,延年,神楽,狂言などいろいろな行事を取り入れた芸能で,国の重要無形民俗文化財に指定されています.
管理人の独断と偏見では,基本的には田楽!だと思います.
防寒用の重装備を脱いで,カメラやストロボなども,とりあえずトランクに放り込んで車を出しました.帰りはナビ君の示したとおり,飯田ICから中央道に乗り,途中阿智PAでサンドイッチと缶コーヒーで朝食.内津峠PAで仮眠.お昼過ぎに帰宅.さすがに疲れました

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